「商売を始めるから、まずはホームページ(HP)を作らなきゃ」
そう考える方は多いですし、過去の私もその一人でした。しかし今振り返ると、「何のためにHPを作るのか」の本質を理解していませんでした。
ビジネスのゴールは「利益を出すこと」です。そのためには商品やサービスを購入してもらう必要がありますが、この「買ってもらう仕組み」を分解すると、実はHPの作成が最優先ではないケースも多々あります。

「ビジネスを始めたから、とりあえずHP」というのは少し気が早いかもしれません。最終的にはHPが必要になるとしても、問題は「取り組む優先順位」です。Webマーケティングの施策は幅広く、業種やリソース(予算・担当者の有無)によって最適な手段は大きく変わるからです。
マーケティングの全体像から見れば、Webマーケティングはその一部に過ぎません。今はWebの重要性が高いため「イコールHP制作」と思われがちですが、店舗型ビジネスの場合、Googleマップの口コミ対策や看板の設置など、他に優先すべき効果的な施策がいくつもあります。まずは視野を広く持ち、自社に合った「はじめの一歩」を考えてみましょう。
そこで、少し面倒に感じるかもしれませんが、まずは入門用の「マーケティング」や「Webマーケティング」の書籍を1〜2冊、図書館で借りて読んでみてください。
概要を理解しないままHPを作っても、上手くいかない可能性が高いからです。3日もあれば読めますし、これほどコスパの良い初期投資はありません。基礎知識という「武器」を手に入れてから、売れる仕組みづくりをスタートさせましょう。
どうしてお客さんがこない?
「良い商品(サービス)ができたから、さあ開店だ!」と思っても、いきなりお客さんは来ません。どんなに魅力的なお店でも、存在を知られていなければ「この世界に存在しない」のと同じだからです。
「HPを作ればなんとかなる」の誤解
では、HPを作れば解決するでしょうか? 結論から言うと、そんなことはありません。作ったばかりのHPは、Googleなどの検索結果にすぐには表示されないため、最初は誰にも見てもらえないのが現実です。
例外として、いきなりアクセスが増えるケースもあります。それは、すでに固定客(ファン)が多くいる場合です。「新しくHPを作ったので見てください」と案内すればアクセスは伸びます。しかし、これも既存のファンが見ているだけなので、肝心の「新規顧客の開拓」にはつながっていません。

HPだけで「知ってもらう」「選んでもらう」の限界
HPだけで「知ってもらう」「選んでもらう」を完結させるのは至難の業です。検索エンジンに評価される対策(SEOなど)を徹底すれば可能性は上がりますが、それだけで新規顧客を集め続けるには限界があります。
「知ってもらう」「選んでもらう」ための手段は、HP以外にもたくさんあります。費用がかかるもの、手間がかかるもの、あなたの得意・不得意によって、選ぶべき正解は変わります。
だからこそ、HPを作る前に、まずはWebマーケティングの「もやもや」を解消しましょう。自社の本当の課題を「見える化」してから動くこと。それが、無駄な出費や遠回りを防ぐ一番の近道です。
第一の壁(知ってもらう)
「知ってもらう」とは、お客さんが「あそこに、あんなお店があるんだ」と認識している状態のことです。ユーザーが何かを必要としたとき、ネットや地図で検索したり、SNSや知人の紹介であなたのお店を知ることからすべてが始まります。
「知ってもらう」ための主な手段(窓口)は、ざっくり以下の5つです。
| Googleマップ(地図アプリ) | 地域名や「近くの〇〇」での検索 |
| インターネット検索 | スマホやPCからのキーワード検索(SEO) |
| SNS・動画 | InstagramやYouTubeなどからの流入 |
| クチコミ・紹介 | 知人からの評判や紹介など |
| 物理媒体・広告 | 店舗の看板、チラシの配布、有償のWeb広告など |
これらすべてをやる必要はありません。実店舗の有無やサービス内容によって優先順位は大きく変わるため、「必ずこれからやるべき」という絶対の正解はないのです。業種やターゲットによっては、クチコミと看板だけで十分に乗り切れるケースもあります。まずは自社にとってどの窓口が一番効果的かを考えてみましょう。
お客さんはあなたのお店を探してない
大前提として、お客さんは最初からあなたのお店を探しているわけではありません。「良い商品やHPがあれば、みんなが見てくれる」というのは売り手側の思い込みです。
お客さんがあなたのお店を初めて認識するのは、「何かを必要としたとき」だけ。ネットや地図アプリで検索し、自分の「困りごと」や「欲しいもの」に条件が一致した瞬間、初めてその存在に気づきます。
つまり、「知ってもらう」の本質は、自分のサービスを一方的にアピールすることではありません。「お客様のいまのニーズ(困りごと・欲求)に、いかに先回りして答えるか」なのです。
手段はひとつじゃない
究極を言えば、他に変えがきかない「唯一無二のサービス」があれば、そもそも集客は必要ありません。以前、Web発信を一切していないのに「半年待ち」という自動車整備業者の方にお会いしました。同業者がお手上げの難案件ばかりを解決しているため、口コミだけで手一杯になり、「これ以上知られたくない」のだそうです。
ただ、これは極めて稀なケース。一般的なビジネスでは、やはり前述した施策(マップ、SNS、看板など)の中から、「自分のビジネスやリソースに合った手段」を選んで対策していくのがベストです。
「ネット検索だけやればいい」「マップだけで十分」といった偏った正解はありません。自社の強みやお客さんの動きに合わせて、柔軟に組み合わせを考えていきましょう。
全部はやらない、まずは一つに集中
ご紹介した施策をすべてやれば効果は期待できますが、非常にコスパが悪くなります。たとえ予算が無限にあったとしても、限られた時間の中で「どこに注力するか」が最も重要です。
すべてを中途半端に手に付けるくらいなら、まずは何か「1つ」にリソース(時間や予算)を集中させましょう。
Webマーケティングは、最初から一発で成功することは稀で、「試行錯誤(テスト)」が基本です。 まずは1つの施策をじっくり試して、結果を振り返り、日々の作業として「習慣化(仕組み化)」できてから次の施策へ進む。これで全く問題ありません。
もちろん、十分な人手があり、担当者を割り当てられるなら並行して進めるのもありです。自社でやるか外注するかという選択肢もありますが、まずは身の丈に合った「1つの集中」から始めてみてください。
第二の壁(選んでもらう)
存在を知ってもらった後のステップです。「お、なんだろう?」と興味を持ってもらい、他店と価格や特徴を比較された上で、最終的に「よし、ここに行こう」と決めてもらう段階を指します。
当然ですが、知ってもらえても最後に選ばれなければ意味がありません。 基本的には、他店に負けない強み(競合優位性)のある商品やサービスがあることが前提ですが、その魅力をWeb上で正しく伝えられなければ、やはり選ばれない存在になってしまいます。
では、どうすれば数あるライバルの中から選んでもらえるのか? アプローチの方法は、大きく分けて「3つ」あります。
| 選んでもらう | 伝えること | 効果的な道具 |
|---|---|---|
| ①これが欲しい | 他店にはない「こだわり」や「強み」、利用した後の「楽しい未来」。 | 他店にはない「こだわり」や「強み」、利用したあとの「未来の楽しさ」。 |
| ②今欲しい | 「今すぐ対応できること」「場所(アクセス)」「営業時間」「料金の明瞭さ」。 | Googleマップ(MEO)、ローカル検索広告、HPのCAT対策(問い合わせ対策)。 |
| ③次も欲しい | 「忘れないでもらうための接点」と「再訪する理由(限定クーポンや新メニュー案内)」。 | LINE公式アカウント、メルマガ、スタンプカード、定期メンテナンスなど。 |
①これがほしい
普段、私たちは何気なく買い物を選んでいるように見えて、実は「ついつい買いたくなる仕掛け」に動かされています。
お客さんが「これが欲しい!」となる動機は、単なる機能や価格の比較だけではありません。店舗型ビジネスにおいて、他店と差をつけるための仕掛けは以下の3つです。
- 「ストーリー」で感情を動かす:
商品やサービスに込めたオーナーの想い、開発秘話などは、価格競争に巻き込まれない強力なフック(これが欲しいの理由)になります。 - 「口コミ・お客様の声」で安心感を与える:
「これだけ多くの人が選んでいるなら大丈夫」という安心感は最後のひと押しになります。HPやGoogleマップにお客様の声を掲載することは非常に効果的です。 - 「動画」で魅力を直感的に伝える:
写真や文字だけ(静止画)よりも、動画のほうがお店の雰囲気や商品の魅力が何倍もリアルに伝わります。
選ばれるきっかけは、何か1つあれば十分です。「場所が近い」「安い」「店主が面白い」など、探せばあなたのお店にも必ず強みがあります。まずは自社の強みを正しく認識し、それをWeb上で意識してアピールすることから始めましょう。
② 今欲しい
「今すぐラーメンが食べたい」「今日中に髪を切りたい」というお客さんを捕まえるには、購入や来店までの「手間」をいかに減らすかが勝負です。
例えば、自分の日常を振り返ってみてください。「お目当てのパンが売り切れていた」「カードが使えなくて諦めた」といった経験はありませんか?Web上でも同じです。
- お店の場所が地図ですぐ分からない
- 問い合わせ先や営業時間が載っていない
- 料金が不明瞭で不安
これらが1つあるだけで、せっかく「今欲しい」と思っているお客さんは他店へ逃げてしまいます。
具体的なWebマーケティングの対策としては、Googleマップに最新の営業時間やメニューを正しく載せること。そして、HPの電話番号や予約ボタン(専門用語で「CTA」と呼びます)を押しやすい位置に配置して、「迷わず、すぐにアクションできる状態」を作ることが最優先になります。
③ 次も欲しい
マーケティングの世界で最も重要とされるのが、この「リピート(再来店)」です。なぜなら、新規のお客さんを1人集めるコストは、常連さんに再来店してもらうコストの数倍高いと言われているからです。
人間は「忘れる生き物」です。どんなにお店を気に入っても、時間が経つと存在自体を忘れてしまいます。 ライバル店たちは、忘れた頃にDM(ハガキ)を送ったり、SNSを定期更新したり、キャンペーンを行ったりして、「忘れられないための工夫」をしています。
最近は「LINE公式アカウント」も定番ですが、友だち数(ユーザー数)が増えると配信コストが高額になるケースもあるため注意が必要です。自社の予算に合った、無理なく続けられる接点づくりを選びましょう。
まとめ
小規模ビジネスのWebマーケティングは、とてもシンプルです。
- 「知ってもらう」(マップ、SNS、看板などから自社に合う窓口を選ぶ)
- 「選んでもらう」(これが・今・次も欲しい、の仕掛けを作る)
ここで重要なのは、この2つを「別々に切り離して考える」ことです。そうすれば、自分が今「何のために、どの道具を使っているのか」が明確になり、迷わなくなります。
「とりあえずHPを作ろう」と焦る必要はありません。HPには「知ってもらう」と「選んでもらう」の両方の役割がありますが、知識のないまま安価な業者に丸投げすると、お店の強み(優位性)がまったく載っていない、ただの「形だけのHP」が出来上がってしまいます。だからこそ、発注者であるオーナー自身がこの基本を意識しておく必要があるのです。
最初の一週間、Webマーケティングの基礎を勉強するだけで、その後の投資効果は劇的に上がります。 すべてを実践できなくても、「自分が何をしていて、何をしていないか」が分かるだけで、ライバルの狙いや自社の立ち位置が見え、次の一手が変わってきます。
スマホやパソコンを触る前に、まずは図書館でマーケティングの入門書を1冊読むこと。遠回りに見えて、それこそが一番の近道です。
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